小論文対策|字数・時間・出題形式と採点の観点を慶應・筑波の入試問題で比較

小論文対策、何から始める?。作文との違いと基本構成。

小論文って、何から勉強すればいいんだろう。作文との違いもよく分からない…

小論文の対策を調べると、型を覚える、ネタを集める、添削を受ける、といった進め方はすぐに見つかります。ただ、本番で何分あって何字書くのか、どんな文章が出て、採点で何を見られるのかは、大学・学部ごとに大きく違います。ここが分からないままだと、練習の時間配分も、どの型を練習すべきかも決められません。

ここでは、問題と評価の観点を公式サイトで公開している慶應義塾大学(一般選抜)と筑波大学(推薦入試)の2026年度入試の問題を並べ、字数と時間、出題の形、大学が示す評価の観点を比べました。そのうえで、志望校の資料から練習の条件を決める手順をまとめています。

本記事の結論
  • 小論文の条件は学部で大きく違う。2026年度の慶應義塾大学では、法学部は60分で800字、総合政策学部は120分で計2,000字だった。1分あたりに書く量では、文学部の約8字から総合政策学部の約17字まで差があった
  • 比べた10の問題では、8つが課題文を要約・説明してから意見を書く形だった。英文の課題文や、理科の計算・短い記述を含むものも小論文として出ていた
  • 比べた2大学が公表している評価の観点は、読解・論理の一貫性・根拠・表現が中心。筑波大学社会学類のように、どの立場をとるかは評価しないと明記する出題もある。対策は、志望校の過去問と出題意図で条件をそろえて書くことから始める
本記事を監修する専門家
難波

独学で東北大学医学部に現役合格。塾講師として指導を行う中“塾外の時間”の使い方こそが成績向上の鍵だと気づき、1週間=168時間に着目したオンライン学習管理塾「168塾」を創設。全国の受験生を支援している。

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現在は東北大学大学院加齢医学研究所にて、脳科学と教育を融合させた研究を行うと同時に、東北大学病院 認知症外来で診療に携わる現役医師でもある。学術と現場の両視点から、「自走力を育む学習法」の確立を目指し、受験にとどまらない“生きるための学び”を提唱。

目次

小論文と作文の違い:入試では思考・判断と表現を見る試験

文部科学省の令和9年度大学入学者選抜実施要項(第6の3)は、小論文や面接などを、自分の考えを論理的に組み立てる力と、その考えを的確に表現する力を評価するために活用することが望ましいとしています。あわせて、小論文の形をとって教科の知識だけを問う出題にならないよう注意することも書かれています。入試の小論文は、知識の量よりも、問いに対してどう考え、どう書き表すかを見る試験です。

項目作文小論文
目的感想・体験を自由に表現する問いに対して論理的に意見を述べる
見られる点表現力・独自性読解、論理の一貫性、根拠、表現
主観の扱い主観で書いてよい意見に根拠を添える
条件字数・時間は課題の指定による時間と字数が決まり、要約などの設問が付くこともある

入試の小論文には、課題文や資料を読ませてから書かせる出題があり、その場合は読み取りの正確さも採点の対象になります。どの入試区分で課すかは大学によって違い、下で比べる慶應義塾大学の問題は一般選抜、筑波大学の問題は推薦入試のものです。ほかに課される試験や、面接・書類の扱いは学部・学類によって異なります。

小論文や面接を組み合わせる総合型選抜の仕組みは、総合型選抜(旧AO入試)とは?仕組みと学校推薦型選抜との違いを解説で詳しく説明しています。

字数と時間は学部で大きく違う:2026年度入試の問題で比較

本番では何分で何字くらい書くの?

比べる大学は、2026年度入試の小論文の問題と、出題意図や評価の観点を大学の公式サイトで確かめられることを基準に選びました。慶應義塾大学は一般選抜で多くの学部が小論文を課し、問題と要項(試験時間・出題のねらい)を公開しています。筑波大学は推薦入試の小論文の問題と出題意図を学類ごとに公開しています。試験時間は、慶應義塾大学は要項から、筑波大学は問題冊子に書かれている学類だけ載せています。2大学・10の学部と学類の問題を見ました。

2026年度入試の小論文の試験時間と指定字数(字数指定のある設問の上限の合計)。慶應義塾大学一般選抜:法学部60分・800字、看護医療学部70分・600字、文学部90分・760字、環境情報学部120分・1,500字(ほかに作図)、総合政策学部120分・2,000字。筑波大学教育学類の推薦入試は120分で、600〜800字の論述1問のほか字数指定のない3問。
出典:慶應義塾大学「2026年度一般選抜要項」・2026年度一般選抜試験問題、筑波大学 令和8年度(2026年度)推薦入試問題。
字数は字数指定のある設問の上限の合計。筑波大学教育学類の時間は問題冊子の表紙による。

同じ大学でも、法学部は60分で800字の1問、総合政策学部は120分で800字・600字・600字の3問でした。字数の上限を試験時間で割ると、1分あたりに書く量は文学部の約8字から総合政策学部の約17字まで開きがあります。課題文や資料を読む時間も含めた数字なので、練習では志望校と同じ時間・字数で書かないと、本番の時間配分がつかめません。

学部・学類2026年度入試の時間と字数
慶應 法学部60分。800字以内の論述1問
慶應 看護医療学部70分。100字以内の要約+500字以内の論述
慶應 文学部90分。300〜360字の要約+320〜400字の論述(縦書き)
慶應 環境情報学部120分。60字以内×5、図3つ、400字以内、800字以内(図で100字相当まで代用可)。字数の上限の合計は1,500字
慶應 総合政策学部120分。800字以内の要約+600字以内×2
筑波 国際総合学類(推薦)400字程度の要約+600字程度の論述を2題(計2,000字程度)
筑波 教育学類(推薦)120分。英文の和訳・説明3問+600〜800字の論述
筑波 社会学類(推薦)2問(問題1は要約+論述、問題2は論述)。問題文に字数の指定はない

出典:慶應義塾大学 2026年度一般選抜要項(試験時間)、慶應義塾大学 2026年度一般選抜 試験問題(字数・出題の形)、慶應義塾大学 一般選抜(2027年度 試験教科・科目・配点)、筑波大学 令和8年度入試問題。2027年度の慶應義塾大学の試験時間は、2027年度の要項で確かめてください。

並べて分かること:小論文という名前でも中身はさまざま

10の問題から見えた出題の傾向
  • 要約+意見の2段構え:10のうち8つで、課題文や資料の要約・説明を書かせてから自分の考えを書かせていた
  • テーマだけの出題はなかった:見た10はすべて課題文か資料つき。ただし環境情報学部や筑波大学看護学類のように、書くテーマを自分で選ぶ設問はあった
  • 英文や理科も出る:筑波大学の教育学類・国際総合学類・看護学類は英文を読ませ、生物資源学類は計算も含む。筑波大学の推薦入試の要項にも、小論文に教科・科目の内容を含む場合があると書かれている
  • 次の年度に無くなることもある:慶應義塾大学経済学部は2026年度まで小論文を課していたが、2027年度から休止する

テーマは、法学部なら防犯カメラとプライバシー、教育学類なら多様な背景をもつ子どもの教育、というように、学部で学ぶ分野と結びついた題材が選ばれていました。題材は毎年変わるので、テーマの的中を狙うより、その分野でよく議論される論点に触れておくほうが役に立ちます。

採点で見られること:大学が公表している評価の観点

文部科学省の実施要項(第13の3)は、教科・科目の個別テストの問題と出題の意図を原則として公表するよう求め、小論文のテーマなどについても積極的に公表することが望ましいとしています。比べた2大学は、小論文で何を評価するかを要項や出題意図に書いています。

学部・学類公表されている評価の観点
慶應 文学部資料の理解力、発想力、論理的構成力、表現力。表記の正確さも求める
慶應 法学部国家や社会の基本原理をめぐる問題について、理解力・分析力・構成力・表現力
慶應 総合政策学部・環境情報学部発想、論理的な構成、表現などの総合的な力
慶應 看護医療学部知識、理解力、分析力、構想力、表現力
筑波 社会学類(推薦)社会科学に関する論理的思考力・理解力・独創性。出題意図では、筆者の主張を正しく読み取って再構成できるか、自分の主張が論理的に整合し根拠があるか、異論に応答できているかを評価のポイントとし、問題1では主張の中身は評価しないとしている
筑波 看護学類(推薦)問題意識、論理的思考力、文章表現力。出題意図では読解力・洞察力も挙げている
筑波 教育学類(推薦)英語の読解力と、論述の論旨の明確さ・論理性
慶應義塾大学は2026年度一般選抜要項と2027年度試験教科・科目、筑波大学は令和9年度推薦入試学生募集要項の採点・評価基準と令和8年度の出題意図による

言葉は大学ごとに違いますが、共通しているのは読み取り・論理の筋道・根拠・表現です。筑波大学社会学類の2026年度の問題には、どの立場をとっても評価に影響しないと問題文に書かれ、慶應義塾大学法学部の問題にも結論は問わないとありました。この2つの問題では、賛成か反対かよりも、選んだ立場をどう支えるかが見られています。

評価の観点から作る見直しのチェック
  • 読み取り:要約に、筆者の主張と根拠の骨組みが入っているか。自分の意見が混ざっていないか
  • 設問への答え:問われたこと(理由、リスクと克服策、解決策など)に、そのまま答えているか
  • 論理と根拠:意見の理由が書かれ、最初の主張と結論が食い違っていないか。予想される反論に触れているか
  • 表現と表記:一文が長すぎず、主語と述語が対応しているか。字数の数え方の指示(慶應義塾大学法学部の2026年度の問題では句読点も字数に含める)に従っているか

小論文の基本構成(型):要約と意見を分けて組み立てる

比べた問題では要約+意見の形が多かったので、構成も2つに分けて考えると書きやすくなります。要約の設問では自分の意見を入れず、意見の設問では課題文のどこを受けて論じるかを示します。

小論文の組み立て方の図。要約の設問では自分の意見は入れず、筆者の主張、根拠、結論の順に骨組みだけを書く。意見の設問では課題文のどこを受けて論じるかを示し、①問題提起、②意見の提示、③根拠の提示、④反対意見への言及、⑤結論の順に組み立てる。最初と最後に結論を置く双括型は主張が伝わりやすい。600字の場合は①②で1段落、③④で1〜2段落、⑤で1段落が例。
要約の設問と意見の設問の組み立て方
  • ①問題提起:課題文・設問から読み取った問いを、自分の言葉で示す
  • ②意見の提示:その問いに対する自分の立場を、結論から述べる
  • ③根拠の提示:なぜそう考えるのか、課題文の論点や具体例を挙げて説明する
  • ④反対意見への言及:想定される反論に触れ、それに対する考えを示す
  • ⑤結論:最初に述べた意見を、改めてまとめる

意見の設問の組み立て方。要約の設問では、筆者の主張→根拠→結論の順に骨組みだけを書く

問題提起の直後に自分の意見(結論)を示し、最後にもう一度結論で締める構成(いわゆる双括型)は、読み手に主張が伝わりやすい書き方です。600字なら①②で1段落、③④で1〜2段落、⑤で1段落のように、字数に合わせて段落の数を決めておくと、本番で書きながら迷いません。

小論文対策の進め方:志望校の条件で練習する

上の比較から、練習の条件は志望校の資料で決めるのが近道です。次の順に進めます。

STEP
志望校の要項と過去問で、時間・字数・出題の形を確かめる

大学の入試情報サイトの過去問題のページと、募集要項の試験時間・選抜方法の欄を見ます。筑波大学は過去数年分の問題と出題意図を、慶應義塾大学は年度ごとの問題と出題意図・解答例を公開しています。課題文が和文か英文か、要約があるか、字数の指定が以内か程度かを書き出しておきます。今年度の要項が出る前は、前年度の要項で見当をつけ、科目の変更の告知も確かめます。

STEP
型を、志望校の字数で書けるようにする

上の構成を、志望校と同じ字数で書く練習をします。内容の独自性より先に、段落の配分と論理の順番を身につけることが最初のステップです。

STEP
要約の練習を別に積む

比べた問題の多くは要約の設問を含んでいました。評論や新書の1節を、100字・400字など字数を変えて要約し、筆者の主張と根拠が抜けていないかを確かめます。英文が出る学部では、英文の要旨を日本語でまとめる練習も加えます。

STEP
志望分野の論点に触れておく

題材は学部の分野と結びついていました。志望学部の過去数年分のテーマを並べ、その分野の入門書やニュース解説で、よく議論される論点と賛否の理由を押さえておきます。

STEP
本番と同じ時間で過去問を書き、出題意図で見直す

時間を計って書き、公開されている出題意図や評価の観点と、上のチェックで見直します。論理の飛躍や根拠の弱さは自分では気づきにくいので、学校の先生などに読んでもらい、指摘を次の答案に生かします。

推薦入試で小論文を使うかどうかは、出願する入試の種類でも変わります。指定校推薦の仕組みは、指定校推薦とは?仕組み・メリットデメリット・校内選考で見られるポイントを解説で詳しく説明しています。

推薦入試・一般選抜の出願と試験の時期は、大学受験の日程|共通テスト・国公立・私立・推薦の流れ【2027年度】にまとめています。

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小論文対策でよくある質問

小論文はいつから対策を始めればいいですか?

小論文を使う入試を受けると決めた段階で、まず志望校の過去問と要項で時間・字数・出題の形を確かめることから始めます。推薦入試や総合型選抜は秋に試験があるため、一般選抜より早く準備が要ります。

小論文の字数は、どれくらい書けばいいですか?

大学・学部ごとに指定が違います。2026年度の慶應義塾大学では、法学部が800字以内、看護医療学部が100字以内と500字以内、文学部が300〜360字と320〜400字のように、上限と下限の両方を決める出題もありました。指定の数え方(句読点を1字に数えるかなど)も問題冊子の注意で確かめてください。

賛成と反対、どちらの立場で書くと有利ですか?

立場で有利不利が決まるとは限りません。筑波大学社会学類の2026年度推薦入試の問題には、どの立場をとっても評価に影響しないと書かれ、出題意図でも問題1について主張の内容は評価の対象にしないとしています。根拠と論理の一貫性で書きやすい立場を選んでください。

独学で小論文対策はできますか?

過去問と出題意図を集めて、時間・字数を決めて書くところまでは独学でも進められます。ただ、論理の飛躍や根拠の弱さは自分では気づきにくいため、どこかの段階で第三者に読んでもらうことをおすすめします。

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