なんで医学部は6年制なの?
6年間でどんなことを学ぶの?
医師を目指し、医学部に入れたとしても卒業まで最短6年。
卒業後も研修医2年、専門医になるにはさらに3~6年とその道のりは非常に長いです。
ほかの学部は4年制が多い中、なぜ医学部は6年制なのでしょう。今回は医学部が6年制である理由やその背景を解説していきます。
・医学部の6年制が始まったのは1974年
・医学部が6年制なのには様々な理由や社会的背景がある
・獣医学部の6年制が始まったのは医学部が6年制になった10年後の1984年
東北大学教育学部在学中に起業。現在はオンライン個別指導塾168塾の運営を行う。
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医学部が6年制になったのはいつから?
医学部・獣医学部以外の学部・学科は4年生の大学がほとんどなのに、なぜ医学部・獣医学部は6年制になったのでしょうか。
医学部の6年制が始まった時期や6年制になった理由について解説していきます。
医学部が6年制になったのは1947年
医学部が6年制になったのは1947年です。
戦前、医学部は5年制で、医学部卒業後に国家試験に合格することで医師になれました。しかし戦後交付された「学校教育法」という新たな規定により、医学部は6年制になりました。
医学部が6年制である理由
医学部が6年制であるには理由があります。
・法律で決められている
・学習しなければいけないことが多い
・実習期間が長い
1.法律で決められている
医学部が6年制なのは「学校教育法」という法律で決められているからです。
学校教育法には医学部が6年制であることを以下のように記載しています。
「第八十七条 大学の修業年限は、四年とする。ただし、特別の専門事項を教授研究する学部及び前条の夜間において授業を行う学部については、その修業年限は、四年を超えるものとすることができる。 ② 医学を履修する課程、歯学を履修する課程、薬学を履修する課程のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするもの又は獣医学を履修する課程については、前項本文の規定にかかわらず、その修業年限は、六年とする。」
(「学校教育法」より抜粋)
ちなみに上記の法律にも記載があるように医学部の他、歯学部、薬学部、獣医学部も6年制のカリキュラムとなっています。
2.学習しなければいけないことが多い
医学部のカリキュラムは、人間の体、病気に関する膨大な量の知識を身につけ、どんな患者さんにも対応できるようになるスキルを身につけるために6年間と設計されています。
医学部では基礎医学から臨床実習まで幅広い分野を学びます。自分のやりたい内容だけではなく、解剖学、生理学、病理学などの基礎医学から、内科、外科、小児科、産婦人科などの臨床医学まで、全て網羅しなければいけません。
また、医師は人の命を預かっているという責任の重い仕事でもあります。自分の専門分野だけを学ぶのではなく、医療に関する知識を幅広く持っていなければ適切な診察や治療が行えません。
そして医学部にいる間だけでなく、卒業して医師になってからも学習を続けていく必要があります。医療の知識は次から次へと新しくアップデートされていくからです。研修を受けたり、専門医資格を取得したり、生涯学習を継続していかなければいけません。
医学部6年間のスケジュールをご紹介!
1、2年・・・教養科目、基礎医学
3、4年・・・臨床医学、共用試験
5、6年・・・臨床実習、国家試験
医学部入学後は教養科目から履修します。教養科目は他の学部の学生が学ぶ内容とほとんど変わりません。
そして1、2年の間に基礎医学を学び、人間の正常な身体の仕組みや構造について知識を身につけます。人間の体の正常な状態を理解していることで、身体の異常や病気を正しく判断できます。
基礎医学では以下のようなことを学びます。
解剖学、生理学、発生学、生化学、遺伝学、微生物学、免疫学、組織学、病理学、薬理学、寄生虫学、公衆衛生学、法医学など
3、4年の臨床医学では、さまざまな病気の状態、疾患、治療法に関する知識を身につけます。また、4年次には共用試験の受験もあります。
臨床医学では以下のようなことを学びます。
内科学、外科学、小児科学、産科婦人科学、整形外科学、皮膚科学、泌尿器科学、耳鼻咽喉科学、脳神経外科学、眼科学、放射線医学、口腔外科学、麻酔科学、救急医学、精神神経科学、腫瘍学など
共用試験はCBT(シービーティー)とOSCE(オスキー)の2つで構成されています。CBTはコンピュータを使用して行われる試験、OSCEは模擬患者を使って技術や態度を評価される試験です。
共用試験に合格しなければ5年生から始まる臨床実習に参加できません。そのため共用試験は医学部生にとって避けては通れない関門の1つです。
5、6年生では約1年半実習を受けて、実践的なスキルを身につけます。そして6年次には国家試験も控えているため、実習をしながら試験勉強にも取り組まなければいけません。
3.実習期間が長い
医学部では実習に長い時間を要します。
4年次に受けるCBT、OSCEの試験に合格すると、スチューデントドクターに認定され、4年生の冬~6年生の1学期の時期まで臨床実習を行います。その期間は実に72週以上=1年半以上です。
「臨床実習」「ポリクリ」「クリクラ」などさまざまな呼ばれ方をします。実習では医学生が大学付属病院や協力病院など各診療所を回りながら診察、検査、手術に参加します。
実習は長期に及び、体力的、精神的にもしんどいということもあります。しかし実習は学生が現場で必要な知識やスキルを習得するためには重要なカリキュラムです。現場で時間をかけて実践的なスキルを身につけることで、卒業後実際に現場で働く際には自信を持って仕事に取り組めます。
医学部が6年制になった背景
教育制度の変化
先述にもあった通り、医学部は戦後にできた学校教育法という規定ができたことで6年制になりました。
医療技術が進み、高度な医療に関する知識とスキルを身につけた医師が必要でした。医学部を6年制にし、より多くの時間をかけて医学を学べる体制ができたのです。
国際的な基準との整合性
日本の医学部は「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づき、教育を行っています。「医学教育モデル・コア・カリキュラム」は文部科学省が策定したカリキュラムで、国際的な基準を踏まえ、かつ日本の医療現場にも適した内容になっています。
医師になるために必要な期間
その医学部に入学した時点から現場で働く医師になるにはどの程度の時間を要するのでしょう?
医学部に入学してから医師になるまでに必要な期間は以下3つの段階に分けることができます。
1.最低でも6年かかる(大学入学~卒業)
2.卒業後、研修医として2年の実務経験を積む
3.専門医を取得するにはさらに3〜6年
最低でも6年かかる(大学入学~卒業)
医学部に入り留年せず毎年進級し続け、国家試験にも合格できた場合は最短の6年で医師の資格を手に入れることができます。ただし国家試験に合格しただけでは医療行為はできず、正式な医師になるために医師免許の申請など、適切な登録を行わなければいけません。
それぞれの大学によりますが、医学部の進級は大変です。医学部で学ぶ内容はアップデートされ続けていて、カリキュラムが新しくなっているため、今後さらに進級の難度は高まると言われています。
そのため医学部で留年というのはよくあることで、ストレートで卒業するのは、かなりハードルの高いことだとわかります。
研修医として2年の実務経験
医学部を卒業し、国家試験に合格したのち、医師になるには研修医として2年実務経験が必要です。研修医としての期間は、指定の病院で専門分野だけでなく、幅広い分野の診療科で経験を積みます。
研修医としての2年が終われば、一人前の医師として現場に立つことができます。
専門医を取得するにはさらに3〜6年
研修医の2年が終わったのち、またさらに研修を受けて専門医の取得を目指す人もいます。
専門医になるための期間は一般的には3年程度と言われ、初期研修の中で不十分だった専門分野を学びます。後期研修を受けると病院での需要も高まり、地位や給与の面でも有利になることもあるでしょう。
最短6年で医師にはなれますが、病院に勤める一人前の医師になるには研修医としての2年経験を積み、また専門医になるのであればそこからさらに3年以上の研修を受けるというわけです。
獣医学部の6年制はいつから?
ここまで医学部について見てきましたが、獣医学部も6年制の学部の1つです。
獣医学部が6年制になったのはいつからなのでしょう。また、どのような背景があるのでしょう。
獣医学部が6年制になったのは1984年
獣医学部が6年制になったのは1984年です。
1890年に獣医学部が東京大学に設置され、その頃は獣医学部は4年制でした。
獣医学部が6年制になった背景
第二次世界大戦後、学制改革で医学部・歯学部と同様、獣医学部も6年制にするよう勧告がありました。しかし、当時は日本の獣医師の需要が拡大すると予想されていなかったことなど諸事情により、4年制に留まっていました。
その後、1973年に獣医師法が一部改正され、続く1984年学校教育法も一部改正されたことから、獣医学部の6年制が始まりました。(参照:わが国の獣医学教育の抜本的改革に関する提言)
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医学部と獣医学部の6年制の違い
医学部と獣医学部は全く異なる医学部です。
この2つの学部はどのような点で違いがあるのでしょう。
医師・獣医師になる過程
医師になる過程
医師になるためまず医学部に入り6年間経験を知識を身につけ、実習で経験を積みます。医師国家試験に合格し、そこから初期研修を受けて医師になります。
獣医師になる過程
獣医師の場合は、獣医学科のある大学に入学し、6年間獣医学を学んだ後、農林水産省が実施する獣医師国家試験を受験します。
獣医学科がある大学は以下の通りです。
国立大学:北海道大学・帯広畜産大学・岩手大学・東京大学・東京農工大学・岐阜大学・鳥取大学・山口大学・宮崎大学・鹿児島大学
私立大学:酪農学園大学・北里大学・日本獣医畜産大学・日本大学・麻布大学・岡山理科大学
学習内容は?
獣医学部も医学部と同様、生命科学について学ぶ点は共通しています。
獣医学部では大学中学年からは動物を対象とした臨床について学んだり、医療分野以外の食品管理や家畜の管理法についても知識を身につけることができます。
卒業後のキャリアは?
医学部を卒業した後は医師国家試験を受験、合格すると医師として病院等の医療施設に務めるのが一般的です。
獣医学部を卒業した後は獣医師国家試験を受け、合格すると獣医師になります。勤務先には動物病院や農場が挙げられます。他にも、公衆衛生や食品衛星の分野で活躍している獣医学部出身の人もいて、獣医学部出身者のキャリアは幅広いです。
偏差値は?
医学部と獣医学部の入学難易度は、医学部のほうが入学難易度は高いでしょう。
獣医学部は医学部と比較すると入試偏差値はやや低めで入学難易度も易しいです。獣医学部は、医学関連の職業に興味があり、動物医療や生命科学の分野で活躍したい人に適しています。
まとめ|医学部での6年は大変だけど充実する
医学部は医師を目指すために膨大な量の知識や的確なスキルを身につけるため、6年制と定められています。
医学部は入学するのも大変ですが、医療業界は進歩し続けるため、大学での座学や実習を受ける6年間はもちろん、医師になってからも学び続ける姿勢が大切です。
また医師という職業は人の命を預かるという責任重大な仕事ですが、選ばれし者にしかできない魅力的な職業と言えます。医師として独り立ちするまでの間、辛いこともありますが医学部にいる人にしか経験できない特別な体験も多いはずです。
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