高校の偏差値と大学の偏差値ってどう違うの?
自分の高校の偏差値が65だったら、大学も65ぐらいのところに行けるの?
こんな風に、ある程度現実的な偏差値レベルを知りたくて迷っている高校生に向けて、偏差値の仕組みや高校入試・大学入試での違いを解説しました。
まずは自分の現状にあった大学を知り、これから頑張るための材料にしてください!
・偏差値は母集団のレベルに左右される
・高校の偏差値より5~15引くと、現実的な大学の偏差値が出る
・とはいえ個人の努力次第ではもっと上も狙える
東北大学教育学部在学中に起業。現在はオンライン個別指導塾168塾の運営を行う。
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1年間の予備校浪人生活を経た後、東北大学教育学部に入学。ベンチャー企業2社で実務経験を積んだ後、浪人時に感じた大手予備校への違和感を基に、「168塾」の立ち上げ・運営。
偏差値とはどういうもの?
偏差値という数字を高校入試のときにも目にしたと思います。この記事では「実は高校と大学の偏差値は少し違う」ということを説明するのですが、その前にそもそも「偏差値」って何なのか、しっかり理解しておきましょう。
偏差値の求め方
偏差値とは、簡単に言えば「そのテストを受けた人たちの中で、自分がどの位置にいるかを示す数値」です。平均点を基準として、自分が平均からどれだけ離れているかを数値化したものです。
自分の絶対的な学力を表すものではなく、あくまで受験者全体の中での相対的な立ち位置を表すものだと覚えてください。
具体的な計算式は次の通りです:
これを見ると少し難しそうに感じますが、ポイントは「平均点」と「標準偏差」という2つの要素。平均点は全員の得点の平均、標準偏差は全員の成績のバラつき具合を表す指標です。
この式を用いると、以下のことがわかります。
- 得点が平均点ピッタリだと偏差値50
- 得点が標準偏差だけずれるごとに偏差値が10変動する
例えば成績表に「平均点60点 自分の得点75点 偏差値60」と書かれていたなら、「平均点と得点の差の15点が偏差値10に相当する」と分かります。もし偏差値70を目指したいなら、さらにあと15点取ればよい、などと計算もできますよ。
偏差値いくらで上位何パーセント?
では、具体的に偏差値がどれくらいだと、上位何パーセントにいるのかを見てみましょう。次のようになります。
- 偏差値70以上 上位2%程度(トップ層)
- 偏差値65 上位7%程度
- 偏差値60 上位16%程度
- 偏差値55 上位30%程度
- 偏差値50 上位50%(ちょうど真ん中)
例えば、偏差値65の高校に入った人は、入試の時点では受験生全体の上位7%にいたことになります。かなりの逸材ですね。偏差値55でも上位30%ですから、十分に優秀な学力を持って高校生になったと言えるでしょう。
高校の偏差値と大学の偏差値の違い
高校の偏差値が高いからといって、必ずしもそのまま同等の偏差値の大学に進学できるわけではありません。以下でその理由をしっかり理解して、大学受験に向けた戦略を考える材料にしてください。
高校の偏差値と大学の偏差値はなぜ違うのか
高校の偏差値と大学の偏差値が異なる最大の理由は、受験者層の違いにあります。最初に述べた通り、偏差値とは「受験者全体の中での自分の相対的な立ち位置」を示すものなので、受験者層が違えば偏差値の数値も違ってくるのです。
具体的に見ていきましょう。
高校進学率はほぼ100%ですから、勉強のできる中学生もそうでない中学生も、ほぼ全員が高校受験を経験します。そのため、偏差値50の高校に入学した生徒は、中学生全体の平均的な学力を持っていることになります。
一方、大学進学率は58%程度(令和5年度学校基本調査による)しかありません。基本的には、高校生の中で学力の高い層が大学進学をすると推測できるので、大学入試の偏差値50は「高校生全体」で見ると割と学力上位の生徒だと言えるでしょう。
さらに、大学入試には中高一貫校の生徒も加わります。中高一貫校の生徒は高校入試の偏差値に算入されていない可能性があるため、今まで見えていなかった上位のライバルが大学入試のフィールドに急に現れることになります。
このように、受験者の学力層が高校入試と大学入試で大きく異なるため、偏差値もずいぶん変わるのです。
この違いを理解せずに「高校の偏差値が65だから、大学も同じ偏差値のところに進学できるだろう」と思い込むと、現実とのギャップに戸惑うことになります。高校と大学の偏差値は異なる指標であるということを、まず念頭に置いてください。
注意!模試によって偏差値の数値は違う
高校や大学の偏差値を考える際にもう一つ重要な点は、模試の種類によって偏差値の数値が異なるということです。
例えば「進研模試」は、公立高校の多くで採用されているため、受験者の学力はかなり幅広いです。そのため進研模試では偏差値が比較的高く出る傾向にあります。さらに、後述する駿台や河合の模試に比べると問題が易しいため、学力が低くてもそこそこの点が取れるという特徴もあります。
一方で「駿台模試」は、難関大学を目指す生徒が多く受験するのが特徴です。受験者層の学力が高いので駿台模試の偏差値は低くなりやすいですね。さらに問題も難しいので、進研模試で易しい問題だけを解いているような生徒は、駿台模試だと手も足も出ないこともあります。
河合塾の「全統模試」は、難易度・受験者層ともに進研模試と駿台模試の中間ぐらいの性格だと思うとよいでしょう。したがって偏差値の数値は進研模試と駿台模試の中間くらいになるようなイメージです。
このように模試によって受験者層が異なり、問題の難易度も違うため、異なる模試の偏差値を単純に比較してはいけないことは意識しておきましょう。
高校の偏差値と大学の偏差値、どれほど違うのか(俗説)
実際に高校・大学の偏差値がどれくらい違うのかという点について、よく耳にする俗説を見てみましょう。
一般的に、高校の偏差値から5~15ポイント引いた数値が、大学入試での現実的な偏差値だと言われています(この偏差値がどの模試での数値を指すのかは不明瞭ですが)。
例えば、偏差値65の高校に通っている場合、大学入試の際には偏差値50~60の大学を目指すのが妥当だとされることが多いです。
では偏差値50~60の大学とは具体的にはどのような大学でしょうか。河合塾が公表している「入試難易予想ランキング表」(24/10/07更新版)の数値からいくつかピックアップしてみましょう。
法学系(国公立)
偏差値60: 北海道大学・筑波大学・東京都立大学・東北大学
偏差値55: 金沢大学・岡山大学
偏差値50: 島根大学・鹿児島大学・香川大学
理学系(国公立)
偏差値60: 名古屋大学・東北大学
偏差値55: 筑波大学・九州大学・金沢大学
偏差値50: 広島大学・岡山大学・信州大学
同じ大学の同じ系の中でも、学科によって偏差値の数値が5~10程度異なることがあります。また、これは全統模試の偏差値なので、進研模試の偏差値に直すともっと高い数値になることにも気をつけてください(例えば全統模試で偏差値60になっている東北大学は、進研模試だと65あたりになるかもしれません)。
ただし、この俗説には色々と注意が必要です。
例えば「自分は偏差値65の高校に進学したから、東大とか京大は無理なのかな」と諦める必要はありません。逆に「自分の高校は偏差値65だから、まあ悪くても鹿児島大学とか広島大学あたりは狙えるんだろう」と思い込むのも大きな間違いです。
このあたりの実情についてはこのあと説明しますね。
偏差値65の高校からの大学進学
ここからは、20年以上塾講師を続けている私の経験を交えて「偏差値65の高校からの大学進学」について実情をお話ししたいと思います。
もちろん一口に「偏差値65の高校」といっても、地域や学校ごとに大きな差があるかもしれません。また、あまり詳細なことを不特定多数の目に触れるブログに書くわけにもいきません。
あくまで私の経験に基づき、差し障りのない範囲の実情をお届けするので、ぜひ参考にして悔いのない高校生活を送ってもらいたいと思います。
実際の進学先
私が20年間、指導してきた生徒の多くは、ランキングサイトで「偏差値65」程度に位置する高校の生徒です。上で述べた俗説によれば、大学入試では偏差値50~60程度のところを目指すのが妥当ということでした。
実際には、進学先がこの範囲に収まる生徒は約半数程度しかいません。しかも偏差値60とされる大学群に進学する生徒は1割いるかどうか、といったところです。
もっと偏差値の高い大学に進学する生徒もいます。東大・京大にもごくわずかに進学しますし、大阪大学にはコンスタントに毎年合格者が出ています。ですから「高校の偏差値が65だったら東大・京大・阪大は無理」というわけでもありません。
一方で、偏差値50に満たない大学に進学する生徒も半数程度いるのが実情です。
なぜこんなにばらつくのか
高校入試の偏差値が65程度あった生徒は、入学時には上位7%程度の学力があったはずなのです。もちろん大学入試は上位半分の中での競争にはなりますが、それでもかなり上位の学力を持つはずの生徒が、なぜこんなに多様な進路をたどるのでしょうか。
その原因は一つではありません。私の目から見ると、以下のような要素が混じり合っているように見えます。
- 「高校入試での頭の良さ」から「大学入試での頭の良さ」へのシフトチェンジができない。
大学入試は高校入試と違って「やればできる」「練習すれば覚えられる」という世界ではなくなりますが、いつまでも高校入試の成功体験を引きずってしまうと成績が低迷します。夜中まで課題をやっているのに成績が上がらない人はこのタイプです。 - 入学後に少し勉強をサボってしまい、分からなくなってしまう。
高校の授業は科目によってはかなりのハイスピードで進む上、内容も難しいため、一度つまずくとずっと分からないままになりがちです。高1の1学期につまずくだけで、取り戻すのに半年以上かかります。「様子を見る」などと悠長なことをしている場合ではありません。 - 「自分は偉い」というプライドが邪魔する。
中学時代まではクラスでかなり上位だったことから、下位に低迷している現実を受け容れられない生徒が結構います。身の丈に合っていない問題集に突然取り組んだり、塾でレベルの高すぎるクラスに入りたがったりするのがこのケースです。当然、理解できないので余計に成績が下がります。 - 文武両道にこだわりすぎる。
中学までは勉強も部活も器用にこなせていたから、高校でもそうしなければならないと思い込むケースがあります。しかし勉強も部活も中学時代とは比べものにならないほどハードです。通学時間も延びることが多いでしょう。そんな中で文武両道にこだわりすぎると、どちらも中途半端になります。
偏差値55の高校からの大学進学
私は偏差値55程度の高校に通う生徒も多く指導してきました。こちらの実情もお話ししたいと思います。
実際の進学先
俗説に従うと、こういった高校からは偏差値40~50程度の大学を目指すのが妥当ということになりますが、まず国公立大学では、実際にその範囲の大学に合格している生徒は3割程度です。
一方、地元の私立大学にはかなり多くの生徒が合格しています。ただし、地元では有力な私立大学でも河合塾のランキングでは偏差値40を切っていることが多いので、私立・国公立を含めてやはり「偏差値40以上の大学」には3割~4割程度の生徒しか合格していないと思われます。
なぜこんなにばらつくのか
偏差値55の高校の生徒の進学先がこんなにばらつく要因は、偏差値65の生徒とは異なる印象です。
- 入学時点から「大学じゃなくても専門学校でいいや」と内心思っている。
偏差値55の高校の生徒は、高1時点で「行けるなら大学がいいけど、別に専門学校でもいい」と考えていることが多いようです。そうすると、3年間でちょっとでも勉強に難しさを感じたときに「まあ専門学校でいいし」と思ってしまうので踏ん張りが利きません。
※専門学校を悪く言っているのではなく、多くの場合、入試の難易度は大学より専門学校の方が低いという現実を述べています。 - 中学時代からすでに苦手科目がある。
中学時代に苦手な科目があっても、偏差値55の高校には合格できます。そのため、基本的な文字式の計算が苦手だったり、中学英語に苦手分野があったりするケースが多いです。そのまま高校内容の授業を受けても、ザルで水をすくうのと同じでなかなか身につきません。 - 学校の課題がゆるすぎる。
偏差値55の高校は、偏差値65の高校に比べると学校の課題がゆるすぎるように見受けられます。やみくもに課題を出せばいいというものではないのですが、もともと学力的に不安のある生徒層なのに家庭学習の質・量が低すぎると、せっかく3年間という時間があっても十分に学力を伸ばせません。
ただ、再度の注意となりますが、ここで挙げている偏差値65や55の高校は、ライターが実際に指導を経験した特定の高校の話です。地域や学校が違えば内情も異なる可能性があるので、ご自身での情報収集も怠らないでくださいね。
高校の偏差値の数値に安心せず、一刻も早く勉強を始めよう
この記事では、高校の偏差値と大学の偏差値が違う理由や、どの程度違うかについて詳しく解説しました。
地元では上位の高校に進学したとしても、大学入試の土俵では決して高くはありません。まして地元で中位の高校に進学するなら、高1のときからしっかり弱点を補強しなければ、ほとんど進学の選択肢がなくなってしまいます。
この記事を読んだ高校生の皆さんが、悔いのない受験準備を始めてくれることを願っています。
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